
学生の頃は全寮制だったので三食カフェテリアで食事をしていたけど、ボストンに来てからは自炊の生活だ。パスタを茹でて簡単に済ませる事が多いけれど、たまに食材を仕入れて日本食を作ったり、ペルー料理を作ったりするのは良い気晴らしになる。友人達と集まってパーティをする時にはちょっと気合いを入れて作ってみたりする事もある。
包丁は普段はヘンケルの牛刀と、有次の一尺を愛用。”西の有次、東の正本”なんて言い方もあるようだけど、まあ京都に住んでいた事もあるし、有次を手に入れる事にした。もちろん、僕の名前を彫ってもらって。友人の日本人留学生やその友人達が集まって、ちょっといい魚を手に入れて(ボストンではその気になれば築地直送の魚だって手に入る)スシパーティをする時にも活躍してくれる。有次は創業1560年、日本ではサムライ信長がいて、ペルーではインカがスペインに戦いを挑んでいた時代だ。これはそんな時代から受け継がれた、サムライの刀と同じ技術で作られた包丁だよなんて話をしながら切り付けたりしていると、米国人のゲストなんかは特に喜んでくれる。柳刃は日本人には見慣れているけれど、彼等には刀みたいな迫力があるかもしれない。手ぬぐいに巻いた柳を出して、白木の鞘を払って一尺の柳刄をまな板の上に置くだけでもちょっとした緊張感が漂う。パフォーマンスがてらキュウリの桂剥き(米国のキュウリは特大なので、巻物の時には桂剥きにして打つ事もある)をしたり。結局メインはカリフォルニアロールや、ボストンロールなんだけどね。切れ味はさすがなもので、キャタピラーロールのアボガドを透けるくらいに薄く切る事だって出来る。使い方を間違えているかな...
魚を捌くのはヘンケルの牛刀で代用しているので、次に日本に行く機会があれば有次で出刃も是非手に入れたいな。あと、薄刃と小出刃も。自分の厨房を設計するなら、パーティ用にスシバーも作って、ネタケースも入れて、包丁の収納も作り付けで..なんて妄想しながらの自炊生活。