独立記念日の夕べは、窓から花火が見えるという絶好のロケーションにリビングを構える、ピアニストのF嬢宅での宴。昨夕の漢な宴とは趣を変え、ミュージシャン達の手作り料理の数々。僕はバカルディを持ち込んで、夏らしくモヒートを作る事にした(ああなんということだ、肝心のライムを入れるのを忘れていた...)。
ワインにモヒートと、合わせてしまったのが悪かったのか、飲めばのむほどたまっている仕事と近づいてくる出発への焦燥感がこみ上げて来た。酒精の暗黒面に取り憑かれてしまい、若干愚痴っぽい、悪い酒になってしまったかなあと、翌朝になって反省。参加者の皆さん、せっかくの宴に水を差すような粗相がありましたら何卒ご容赦を。ライムも忘れていたし...
宴


この週末は7月4日独立記念日が掛かることもあり、連日の宴会だった。ペルー行きを数週間後に控えていて、実はとんでもなく忙しくて酔っぱらっている暇はまっっったく無いはずなのだけど、まあそんな時もあるだろう。
木曜にはいつもお世話になっているムエタイジムのS先輩が(フルコンタクトの黒帯も持っておられる根っからの格闘家である)、ペルー行きの壮行会も兼ねてすずき、カツオ、コハダ、牡蠣などをトロ箱に詰め込んでの御光臨。モルト好きの大兄のこと、もちろんボトルをぶら下げて。
今回はちょっと珍しいロウランドのリトルミル8年。素朴でライトな味わいなので淡白なすずきからキックの効いたカツオまでオールマイティに楽しめる。牡蠣には前回持って来ていただいたタリスカーがたっぷり残っていたので香りを合わせる。
かなりのモルトマニアであるS先輩は、拙宅での宴の際には数十本の秘蔵の中からの数本と、独自のルートから築地直送の肴などを毎回必ず持って来て下さる(写真は以前の宴に登場したシングルトン10年、タリスカー1992、ローズバンク15年、そしてダンカンテイラー/ロングモーン29年)。格闘技やモルトなど先輩の深い体験談など聞かせていただきながら、モルトと海の幸を味わうのは、なかなか得難い、楽しみな時間である。今秋ペルーから帰国した際には、是非ピスコなども試していただこうかと考えている。
ダンヒルのサービスライター

日本で煙草が一箱1000円になるかもしれないという話。すでにNYあたりじゃ$10くらいするし、ボストンでは$6前後だろうか。僕が渡米した頃は$1.5だったから随分と上がったものだ。もともと嗜好品だし、”これから煙草は高級嗜好品という事で、厳選された上級葉のみ販売、1000円”というならまあ納得できるけど、税金が上がるだけってのは無粋な話だ。そんなに払うのなら、ダビドフのシガリロあたりを日常品として楽しめてしまう。すでにボストン市内のバーやレストランでは喫煙可の店は殆どなくなって(シガーバーなど特別な店は可)、自室でしか飲めない。こうなるとお手軽な紙巻きである必要はないわけで、ゆっくりとシガーやパイプを楽しんだほうがいいかもしれない。
僕は普段から煙草を嗜むわけではないけれど、やっかいな仕事があったり、厳しい環境の調査現場に行く時には煙草を仕入れていったりもする。ちょっと特別な日に、ちょっと贅沢をしてダビドフとアイラモルトなんぞを手に入れて、友人達と集まるととても楽しい時間を過ごす事ができる。もちろん、煙を好まない人やスポーツ選手がその場にいる時には別室で吸っているけれど。
初めてヨーロッパにパッカーの旅に出た頃の写真をみるとテーブルの上にジタンの箱が置いてあったりするので、どうやらその頃には小銭を煙にしてしまう事を覚えたようだ。バス待ちの時間や、何をするでもなくカフェに陣取って通りなどを眺めている時に手許でライターを弄びながら煙を眺めているのは心地よいものだし、一人旅でカフェやバーに入るのは行為としての食事や飲酒に専念してしまい、せかせかしたものになってしまうが、煙を燻らせているとその場を楽しむ余裕を与えてくれる。テーブルの上に置いてあるそれはゴロワーズやデュカドスに変わったり、ハミルトンやプリミエルに変わったりし、訪れる土地土地で変わる味を比べる楽しみもある。フェンシングやムエタイの練習に打ち込んでいる時期にはさすがに肺が不健康だと痛い目にあうので止めてみたり、また厳しい調査現場に行く時にはまた手を出したり、となる。
喫煙具はいつもポケットの中にその感触を感じて一日に何度も手に取るので、喫煙具を選ぶのは腕時計を選ぶのに似た楽しみがある。普段よく使っているのはジッポやイムコなどのオイルライターだが、これは大戦中のダンヒルのサービスライター。イムコのトレンチライターによく似ているが、これは米国製で同じ頃に兵士向けに生産されたもののようだ。ライフルの薬莢のような型のインナーにオイルをしみ込ませた綿とウィックが入り、ブリキの板で石を巻き込んである。シンプル極まりないものだが、それだけに作られて何十年もたってもちゃんと火をつけてくれる。大戦に参加した兵士が持ち帰った物か、ウィスコンシン州の田舎の街のアンティークショップのがらくたの箱の中に錆だらけで転がっていた。ダンヒルの名を冠したこのライターは日本のアンティークショップなどへ行くとガラスケースの中に鎮座していたりちょっとした扱いを受けているモノだが、店主は錆だらけのそれに大した興味も無かったようで、値段は煙草一箱よりも安かった。それがダンヒルのものであるか知っているかさえ怪しかったが。その店に立ち寄ったのは大雪の日で、他に客はいなかった事もあり、そのまま作業場の隅っこと道具を借りて錆を落としたりしてどうにか動くようにしたもの。キャンプで焚き火をする事もある調査旅行などでは、より確実なジッポを持って行くので、これはもっぱら部屋の中で使うことにしている。
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
インディ・ジョーンズの新作、”クリスタルスカルの王国”が遂に今日公開。早速見に行って来た。ネタバレになるとなんなのでここで詳しくは書けないけれど、かなり楽しめた。今回は中南米が舞台という事で、実際に自分が調査で行っている場所なんかがけっこう出て来て薄暗い劇場で一人にやついていた。
”最後の聖戦”が公開されたのが89年、僕が中学生の頃。友人達と随分盛り上がった記憶がある。僕はその後寮生活を初めて、そして渡米したのだけど、実家の僕の部屋にはけっこう最近まで最後の聖戦のポスターが張ったままだった。映画の中で、インディ・ジョーンズが暴れている場所で自分が調査しているのがなんだか不思議な気分。
この映画が僕が考古学に興味を持ったきっかけ、というわけではないけれど、でも子供の頃から大好きなキャラクターだ。米国では考古学者のイメージとしてはやはり定番で、ハリソン・フォードが考古学協会から役員に任命されたほど。考古学を志して入ってくる一年生のなかに毎年一人は”インディ・ジョーンズに憧れて”というのが混じっていた。発掘実習ではトレードマークの帽子とジャケット(改造A2だったか)で固めている奴が一人はいたものだ(さすがに鞭は持っていなかったけれど)。僕の学んだ大学は、伝統的に人類学(分野として考古学を含めて)に力を入れていて、実はインディ・ジョーンズのモデルとなった冒険家チャップマンが学んだ大学でもある。
そういえばあのフェドラ帽、学生時代に調査隊の仲間達と飲みながら”いつになったらあの帽子を被るに相応しいか”というバカ話をした事がある。”大学院の3年目くらい”というあたりに落ち着いたような記憶がある。”もう後には戻れないだろう”というような意味だったが。そんなわけで、前回調査旅行に行った時、クスコで似たような帽子を手に入れて現場に被って行ってみた。クスコ近辺では良かったけれど、実際にジャングルの中に入るととんでもなく蒸れて大変だった。やはり、映画のようにはいかないものだ。
VXnano

このところ建築→考古→建築→考古→と立て続けに仕事や学校の発表が重なっている。楽しい仕事ばかりではあるけど、そんなに器用な質ではないので頭の中がとっ散らかって整理するのが追いつかない。そんな時に限って面倒な事は起きるもので、愛用しているマウスが、しかもメインに使っているMac用とThinkPad用の両方、ほぼ同時に不調になった。
そんな訳で急遽マウス探し。これまでケンジントンのスタジオマウスを使っていた。もともとデザインなどの仕事向けにつくられたモノで、精度も良くスクロールがタッチセンサーになっていてかなり使い易く気に入っていたのだが、とうとうチャタリングがおきてきた。もう4年も使っていたし、バックパックに放り込んでジャングルの現場に持ち込んだりもしていたのでよく持ったものだと思う。Mighty Mouseも使っているけど、もともとMacの1ボタンに慣れていたためか若干真ん中よりに指をおく癖があり、左右のクリックがごっちゃになってしまうのと、スクロールボールがゴミでつまる事が多く、ちょっと仕事には使いづらい。
設計やグラフィックの作業をしているので手の延長としてのインプットデバイスは大事なモノだし、一日の半分は手の中にマウスがある。その場しのぎのモノを買ってそれに慣れてしまうのもなんだか嫌なので、ここは自分の仕事に向いたモノをじっくり選ぶことにした(この間古いマウスのスイッチをスタジオマウスに移植して使っていた)。最初ケンジントンで探してみたのだが、残念ながら今はデザインなどに向いたモデルは作っていないようで、他にもいろいろと探してみる事になった。
スタジオマウスに満足している間にマウスもかなり進化していたようで候補はいろいろとあがったけれど、最終的にLogitechのレーザーマウス、VXnanoを選んだ。定評のあるMXrやVXrも考えたが、僕は指先でつまむようにしてマウスをコントロールするのであまり持ち方を限定されるのは好みではないのと、調査旅行に持っていく事を考えるとやはり小型のほうがよい(nanoには専用のソフトケースまでついている)。
特徴である極小レシーバーは本当に小さくて驚いたが、plug’n forgetというより普通になくしてしまいそうだ。レーザーの精度はまだ体感するほど使い込んでいないけど、CADやPhotoShopで使ってみているがかなり使いやすい。また僕は日本で入手した書籍などはスキャンしてPDFにして持って来ているが、プレシジョンスクロールホイールのおかげでThinkPadでも閲覧しやすそうだ。一つ難があるとするならそのダースベイダーのような面構え。これが全くMacに似合わない。他のハイエンドのマウスも同じような仕上げが多かったけれど、仕事の道具として選ばれるレベルのモデルだろうし、Macユーザも少なくないのではないかな。常に手に触れるものだけにスペック以上にフィーリングなどが大事になってくるものだろうし、マテリアルやテクスチャなどもうちょっとバリエーションがあってもよいかと思うのだけど。
さて、満足のいくマウスが手に入って仕事がはかどっているかというとそういうわけでもない。ただ忙しくてモノ探しの世界へ現実逃避しているだけなんだろうな、という事は自分が一番よく分かっている。
ようやく自転車に乗れる

長かったボストンの冬もようやく終わり(といっても今外は5℃だけど)、やっと自転車に乗れる季節になった。冬の間に完成させる予定だったキャノンデールのCAAD5は壁にぶらさがったきりで、すっかりオブジェになってしまっているけれど、GTのピストを久々に乗り回したい。
さて、GTにはフロントブレーキをつけているのであまりハードなスキッドなんぞをすることもないけれど、バックを踏む事はあるし引き足も使いたいので、パワーグリップというストラップを使っている。これは足を入れてひねるだけで固定される優れもの。クランクブラザーズのエッグビーターも試してみたいけれど(これはボストンのメッセンジャー達にも結構使っている人がいる)やはり街乗りなので普通の靴も使えるほうが便利だ。
あまり本格的なサイクリングシューズを使うことは無いけれど、これは冬の間に手に入れた古いデットピエトロのサイクリングシューズ。7、80年代にバイクに乗っていた人には懐かしいモノかも。ミラノで作られた美しい細身のレザーシューズで、通気のためのパンチングがとてもセクシー。なんとレザーソールだったのだ。カーボンソールとはいかないけれど、内部にベースが入っているのか剛性も高い。つま先からシューレースで編み上げるのでフィット感は高く、履き心地はもちろんレーシングシューズのそれである。
専用のプレートも探せば手に入るのかもしれないけれど、ヴィンテージのペダルやトゥクリップやらを探す旅が始まりそうなのでここは自制。ちょっともったいないけれどソール保護に薄いラバーソールでも貼り付けてこのままパワーグリップで使おうと考えている。こういうシューズを手に入れるとRAPHAのウェアやらヴィンテージのカンパのジャージなんかで合わせたくなるところだけど、GTのイメージからは遠くなってしまうな。やっぱりオールドイタリアンバイクが似合うのだろう。
カトラリー

カトラリーは装飾のないシンプルなものを選んでいる。左はおなじみ柳宗理のシリーズ。特徴的な幅広のナイフや深いカーブのスプーンなど、現代的なエレガントさはあるのに無理や無駄が全くない。とても使い易く、使ってみて”なぜこの型なのか”がよくわかる。皆大好きなマドラーはアラン•デュカスのレストランでも使われている逸品だ。真ん中はドイツのヘンケルのシリーズ。アタリマエの型なのにすごくシャープ。とてもバランスが良い。これはもう15年くらい飽きる事なく使っている。一番右は特別出演、ジョージジェンセンのフォーク。アルネヤコブセンによる、デンマークのSASホテルの為にデザインされたもので、”2001年宇宙の旅”に使われたものだ。友人の預かりものなので使った事はないけれど、一度このセットも揃えてみたいところ。
柳宗理のボウル

これも同じく柳宗理のデザインによるボウル。これはNYのMoMAStoreで手に入れた物だ。一般的なボウルよりも側面の角度が深く、とてもホ-ルドしやすい。これは若干小さいシリーズなので、調理よりもくるみや干し無花果などのつまみを入れて机の隅において使っている事の方が多い。以前同じ物をもう1セット持っていたのだけど、友人がとても気に入ってコレクションのファイヤーキングの皿と交換にもらわれていった。調理用として使うならやはりもう一回り大きいサイズのものが良いかもしれない。
(柳 宗理 ステンレス ミキシングボウル,3個セットMoMAstoreへ)
柳宗理 飯椀

海外生活をしているとたまに日本食を食べたくなる事は,当然ある。以前中西部の田舎街に住んでいた頃は、日本食にありつくのは一苦労だった。たまの休みに日本人留学生達と何時間もドライブしてシカゴ郊外のヤオハン(今は別の会社になっているようだが)に行く事もあった。とはいえ、都市部なら日本食にありつく事は全く難しくはない。米国では日本食はかなりメジャーで、オサレな高級食として確立されている。ボストンにも日本食レストランはたくさんあるし、日本食材を売っている店もいくつかある。魚介類は築地直送のものですら手に入れる事ができるので、その気になれば毎日日本食で暮らす事だってできる(そしてそういう人も結構いる)。
たまに自宅で日本食を作る時には、日本の飯碗でご飯を食べたいものだ。僕が使っているのは柳宗理の磁器の飯椀。やさしい曲線の椀、潔い白無地に青い丸紋が描かれている。静謐な印象を与えながらも日常に使う事を前提としたデザインである。他にも同じシリーズでいくつかでているようだ。機会があれが是非手に入れてみたい。
柳宗理 和食器シリーズ 丸紋 飯椀
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ルクルーゼのココットロンド

今、表の気温は-13度。湿度や風による体感気温はー20度近い。これだけ寒いと、暖かい家の中で窓の外の雪などを眺めながらウォッカをのみつつ暖かいシチューなどを食べるのは幸せな事だ。煮込み料理に使うのはこのルクルーゼのココット。大学の寮を出てアパート暮らしを初めたときに最初に手に入れたものだ。
無駄なものなど一切ないシンプルなこの琺瑯の鍋は、”これこそ鍋”といった存在感がある。ずっと昔から厨房にいたような佇まいだ。鋳鉄と琺瑯とその重い蓋で煮込みに威力を発揮してくれるプロも使う定番の鍋で、何代にもわたって使っていけるものだ。今使っているのはココット・ロンド 20cm オレンジ 。二人分くらいには丁度よいけど大人数の料理は出来ないのでもう一回り大きいものも欲しいところ。ルクルーゼは他にフライパンも持っているけれど、これはかなり重くてパエリヤなんかにはよいけれど振り回す気にはなれないかな。
一人で食べるときによく作るのは、じゃがいもやたまねぎ、マッシュルームなどをソーセージととり肉といっしょに大量の白ワインでひたすら煮込み、ダイストマトを放り込んでさらに煮込んだシチュー。味付けは岩塩と胡椒だけ。水は入れないか、入れてもグラス一杯程度。全部ルクルーゼの中に入れてとろ火にかけておけば後は鍋が勝手に仕上げてくれる。まあ料理とも言えないごった煮なのであまり人には作らないけれど、シンプルな味が気に入っていて、ルクルーゼで作るととても美味い。
(ココット・ロンド 20cm オレンジ )