ゼロハリバートンのケース

ゼロハリバートン

最近、初めてスーツケースを購入した。調査旅行などではタフな環境に行く事が多かった事もあり、機動力を重視してバックパックを使ってきたけれど、大事な機材やデータを預かる機会も増えてきたのでスーツケースを使ってみようと考えた。
選んだのはゼロ•ハリバートン。頑丈無比なアルミケースで、NASAが月の石を運んできた等の有名すぎる逸話は今更紹介するまでも無いだろう。ピックアップトラックの荷台に放り込まれ、バスの屋根から投げ落とされ、ロバの背に揺られても壊れないスーツケースというとまず思い浮かぶのがゼロだった。リモワも考えたけど、ゼロのカメラケースを以前から使用していたし、ある尊敬する考古学者が現場でランクルの荷台に傷だらけのゼロのケースを乗せている姿が記憶に残っていた事もあってこちらを選んだ。
この129cは機材コンテナ/カメラケースとしてラインアップされているモノで、ゼローラー等のいわゆるスーツケースではない。エグゼクティブ向けにデザインされたスーツケースはもちろん使い勝手は良いのだろうけど、ローラーや引き手など壊れる可能性のある部品に不安が残る。旅先でそういったパーツが壊れると非常に困った事になる。その点これはただのアルミの箱、といったシンプルさで、まず壊れるような物はついていない。20x29x10インチなので大きめのスーツケースと同じサイズではあるが、外付けのカートを使えば使い勝手は同じだし、壊れても現地調達できるだろう。
ただ機材ケースなだけあって、中を開けると巨大なフォームが詰まっているだけで仕切りもなにもない(これをカメラやら銃といった機材の形にカットして使う)。フォームを出すとアルミむき出しなので、さすがにこのままではスーツケースとして使えない。ゼローラーの内張を取り寄せる事も考えたけど、真ん中に仕切りがあると寝袋やテントといった装備を入れづらくなるし、ペルー土産のパネトンも入らなくなる。そこでマットとパラシュートクロスで内張を自作した。まだ実際には使っていないので感想はこれから。次の旅にはぜひ持って行こうと考えている。

茄子 スーツケースの渡り鳥

夜は久々にゆっくりと映画を見ていた。茄子 スーツケースの渡り鳥。いまさらだけど、やっと見る事ができた。ずっと見たかったのだけどさすがにボストンでは手に入れるのが難しかった。前作の”アンダルシアの夏”にすっかりはまっていたのだけど、今作もかなり楽しめた。
前作では主人公のノスタルジアをレースの進行とともに描いていたが、今作ではレースそのものにもどっぷりはまる作りになっていた。自転車やレースの描写がさらにリアルになっていて、ジャパンカップのコースはもちろん、ギヤチェンジの瞬間の自転車の挙動、エルゴパワーのグリップなど細かいところまで非常にリアルに描かれている。レーサーの目線からのシーンでは思わず声を上げてしまった。
見ている間とても自転車に乗りたくなり、この冬に組み上げる予定で壁にぶら下げられたままのキャノンデールのフレームに何度も目がいってしまった。手元ではずっとコーラスのレバーをかちゃかちゃと弄りながら。雪が溶けるまでに組み上がるのかな...

ボブルビーの鞄

Boblbe-e

普段自転車に乗るときによく使っているのはボブルビーのMegalopolis。1998年に日本に紹介されたころ、その強烈すぎるインパクトで流行モノで終わるかと思いきや、すっかり定番となっているのはやはりその鞄としての完成度の高さ故だろう。この鞄が出た頃は米国にいて、もちろんこちらでは手に入らないので帰国した機会に真っ先に手に入れたもモノだ。
一体型ABS樹脂ボディは頑強で中身をきっちり守ってくれるが、背面もハーネスもしっかりしているので背負い心地は素晴らしく、ぴたりと背中に張り付いてくれる。ラップトップをベルクロで固定するポケットがあり、僕のThinkPadはもちろん問題なく飲み込んでくれる(小型のXだし)。さらにデジ一眼からレンズ、外付けHDや本を数冊といろいろと放り込んでも、フラップで簡単に閉じ込められる。もちろん、ハードシェルなので変形して荷物を収納してくれる事はないけれど、ストラップで引っ掛けるだけなので意外とパッキングに神経質になる事はない(僕はトートバックのように気楽に放り込んでいる)。
メッセンジャーバックとしてデザインされた鞄も使っているけれど、自転車で派手に転んだ時の事を考えるとラップトップやカメラを持ち運ぶのにはちょっと不安がある。ボブルビーだと持ち主がどうなろうと、まあ機材は確実に守ってくれそうだ。さらに気に入っているのは殆どのパーツが購入可能で、自分でカスタマイズしたり交換修理したりできる事だ。シェルやハーネスもまるで自転車の部品を弄るように交換出来る。
ボブルビーは街中ではよく使っているのだけど、一度も南米への調査旅行に持って行った事はない。過酷な環境で行われる事が多い発掘調査では、ラップトップやカメラなどを持ち運ぶ鞄選びは非常に大事だ。機動力がありながら中身をきっちり保護してくれるボブルビーはたしかに調査旅行に良いだろうけど、やっぱり目立ちすぎる。自然環境も過酷だけれど、治安も良いところばかりではないので、ここまでインパクトが強いと首閉め強盗やらのターゲットになりやすいような気がしていた。そんなわけでずっと街専用にしていたのだけど、驚いた事に僕の友人の考古学者はペルーの現場でも使っているという。”狙われなかったか?”と聞くと”別になにも問題もないよ”との事。ちょっと不安もあるけど、次の調査旅行で使ってみようかと思っている。
BOBLBE-E MEGALOPOLIS他

雪の週末

昨夕は建築の大事なプレゼンがあり、しばらく忙しい日々が続いていた。プレゼンは無事好評を得られたのだけど、そろそろ徹夜はつらい。体力には自信があるのだけど...
ボストンは朝から雪。午後から吹雪になるらしく学校やらは休みになっているようだ。昨夕までの疲れも抜けていないので一日休みたかったのだけど、考古の仕事もおしているのでソレルを履いて雪の中スタジオへ。途中ミーティングのため吹雪の中ハーバードまで行く。大学のブックストアでいろいろと本を漁った後スタジオへ戻った頃にはもうすっかり暗くなり、吹雪もかなりひどくなっていた。今日はもう帰ってゆっくりするか、と荷物をまとめているところへ友人から電話が入り、Alfred Brendel のコンサートのチケットが余ってる、ただし開演まで一時間との事。大急ぎでアパートに着替えに戻る。
吹雪の中にもかかわらず、ボストンシンフォニーホールにはたくさんの聴衆がつめかけていた。彼が今年を最後に引退を表明しているとのことで、もうライブで聴くのは難しいとか。一気に引き込まれる演奏で、最後のシューベルトのソナタまであっという間だった。なんだかちょっとリセットされたような気分を味わった。スタンディングオベーション、頭上拍手、ホール中が桁外れに感動しているのが伝わってくる。”何故引退?まだまだ弾けるじゃないか”と友人が言っていたが、絶頂期のうちに引退する事を考えていたそうだ。いろいろと考えさせられる。

SIGGのボトル

sigg

グランテトラの水筒はとても気に入っているけれど、街で持ち歩くにはちょっと無骨すぎるので普段使えるような水筒を探していた。アメリカ人の学生はよくナルジェンのボトルをキャンパスで持ち歩いているけれど、調査現場やスポーツジムならともかく、普段持ち歩きたいデザインとは言い難い。
そんな時、イースター島で出会った旅人が腰にぶら下げていたのがこのSIGGの燃料ボトル型の水筒だった。アルミのコンテナはとても軽く、頑丈で、シンプルな形はフィールドでも街でも使えそうだった。一目見て気に入って探してみたのだけど、当時(90年代)米国ではSIGGの商品は殆ど手に入らなかった。同じ頃ファイヤージェットも探していたのだけど、これも入手出来なかった記憶がある。結局イギリスに行ったときにヨークのアウトドアショップで見つける事ができた(今では米国でも簡単に入手できるようになり、持ち歩いている人も見かけるようになった)。
ORが丁度良い大きさのケースを出していたので(やはり燃料ボトル用だろうか?)、これに入れて鞄やベルトからぶら下げられるようにして毎日のように学校やオフィスで使っている。もちろん、ペルーの現場でも使っていた。とにかく軽量なので持ち歩くのが気にならず、他のボトルと比べてスリムなので鞄にもしまい易い。アルミボディは薄くてへこみやすいけれど、その分愛着が増してくる。キャップをすぐに無くしてしまいそうで気になるが、最近はバイク用のボトルのようなスナップで開けられるキャップも別売りしているようなのでこれも近く試してみたい。グランテトラと合わせて、長く使っていけそうだ。
(SIGG(シグ) トラベラースイスクロス1.0L 1.0L レッド

Nalgene と MSR Dromedary Bag

water2

グランテトラやSIGGは普段持ち歩くので、邪魔にならない0.75Lのサイズを使っている(酒のボトルがちょうど一本入るので便利でもある)。ただ場所によってはこれらのボトルでは足りない場合もある。もともと0.75Lは一日分としては少ないが、普段旅しているときや調査現場にいるときは無くなれば補給出来るので問題はないのだけど、水筒を空にしたくない環境や、補給が難しい状況もある。
世界で最も乾燥した場所であるアタカマ砂漠では、測量機材を担いで一日中うろつく事もあるが、水分補給はかなり大事だ。自分が感じているよりも早く水分と塩分を失っていくので規則的に(飲みたくなくても)水分を取るようにしないと大変な事になる。初めて現場にくる学生には予め注意しておくのだけれど、水分補給を忘れて熱中症になってしまう人はよくいる。またアマゾンのジャングルを丸一日歩いた時には、途中水場はあるようだったので1L程しか用意しなかった。あまり荷物を重くしたくなかったというのもあるが、補給用に浄水ピルだけを持っていった。いざ川を見つけると、その地域の水はミネラルが多すぎて沸かさないと飲めないとかで現地スタッフに止められて補給出来なくなり、えらい目にあった事も有る(ミネラルは浄水ピルではどうしようもない)。こういう現場では、水筒一本では全く足りないのでNalgeneのボトルや、MSRのDromedary Bagと併用している。
MSRのDromedary Bagは軽量で、使わない時にはたたんでしまっておけるので予備にバックパックの中に入れておく。パッカーに定番のNalgeneは随分長い間使っているが、最近ではこの乳白色のモデルは見かけなくなった。これに銀色のダクトテープをぐるぐる巻いて使っているパッカーがよくいたが、最近ではそういうむさ苦しい(?)技もあまりやっている人はいないようだ。
(nalgene(ナルゲン) カラーボトル 1.0L ルビー)

グランテトラの水筒

Le Grand Tetras

調査旅行のとき、水筒は状況に合わせて使い分けるので何種類かをバックパックに放り込んで行く。このグランテトラは一番付き合いが長く、高校生の頃から愛用しているもの。エナメル•グラスティック加工された内面は嫌な匂いもつかないし、水やワインの味を変えることもない。これは0.75Lの、丁度酒のボトルが一本入るサイズのもので、いつも鞄の中に入れて持ち歩いている。旅する時には必ず持って行くので、砂漠やらジャングルやらいろんなところで投げられたりぶつけられたりして傷だらけでこぼこになっているけれど、それは旅の記憶を共有してくれているものとしてますます手放せない。現場に出るときは、最近では若干軽いSIGGのアルミボトルを腰にぶら下げている事が多いけど、酒コンテナとして活躍してくれている。

オピネルのナイフ

Opinel

南米の調査旅行やバックパックの旅に出かけるときに必ず持っていくのがパッカーには定番のこのオピネルのNO9。木のハンドルと炭素鋼のブレードをリングで固定するだけの、シンプルなサヴォアの農村で使われている伝統的なナイフだ。高校生の頃にトレッキングに行くときに入手したように記憶しているが随分長い間使っているので定かではない。米国や日本の街中では無用のトラブルになる事があるので持ち出す事はないけれど、旅しているときには大抵ポケットに入っている。
丸く削られた木の柄はしっとりと手になじみ、とても軽いので持ち歩いていてもあまり気にならない。調査地で、昼食のパンやチーズを削るときにはもちろん、ロープや木を切るときにも活躍してくれる。たまねぎやトマトを手にもったままオピネルでみじん切りにして、缶詰のサーディンとレモン汁やオリーブオイルをシェラカップの中でかき混ぜてつまみを作るのは、アタカマ砂漠で夜に調査の仲間達と焚き火を囲んでガトーネグロのワインを空けているときに覚えた技だ。ちなみにサーディンの缶さえもオピネルでがりがりと切って空けてしまうが、これはチリの調査地の村のおばあさんに教えてもらった技。
炭素鋼のブレードは簡素ではあるけれどきちんと研げば素晴らしい切れ味があり、ちょっとタフな使い方にも十分耐えてくれる。ペルーの農夫に売ってもらったうさぎを捌いた事もあるし、チリ軍の友人とリャマを狩ってバーベキューをしたこともある(もちろん狩るのはオピネルではなく銃だけど)。友人はこれ一本で巨大なリャマをするすると捌いてくれ、見ていて惚れ惚れとする手技だった。魚を捌くのはちょっと自信はあるけれど、さすがにこれは見とれているしかなかった。
ガーバーのマルチプライヤーなど、もっと現代的な、あきらかに頑丈で使い勝手のよいナイフもいろいろと使っているけれど、この簡素なオピネルが一番稼働率が高いかもしれない。長くつかっているとブレードががたついてくると聞いたけれど、今のところなんの問題もなく使えている。何度も修理したり買い換えたりして使い続けていきたいナイフだ。もちろん、ラブレスのダブルヌードのドロップハンターのような業物を腰に下げて現場にでるのも憧れるけれど、それでも、やっぱり素朴なオピネルはポケットに入っているのかもしれない。
(キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) オピネル フォールディングナイフNO.9(ストッパー付))

ハッセルブラッド 500C/M

Hasselblad 500C/M

このところメインカメラにしているのはハッセルの500C/M。建築を始めてから考古学だけをやっている頃とはカメラの使い方が少し変わってきた。建築物やインテリアを撮ったりする機会が増えたし、デザインをやっている人間関係の中で簡単な出版用の写真を頼まれるような事もある。フィールドだと頑丈さと機動性を重視していたけれど、スタジオで三脚を立ててじっくりと撮るようなカメラも必要になってきたわけだ。
僕がボストンに来た頃はデジタルと銀塩が本格的に入れ替わってきた中途半端な時期で、新たにカメラを選ぶのはちょっと難しかった。近い将来デジタル一眼レフがメインになるのは目に見えているけれど、写真の質はまだまだ銀塩の方が良かった。高画質のプロ用デジタル一眼レフはあるけれど、高価すぎたし、中級機を買うならフィルムをスキャンした方がよかった。この機にデジタルに完全移行覚悟を決めるのか、もう一度銀塩カメラを買っておくのか、といった頃だった。
結局、最後の銀塩カメラのつもりで、長く使って行けるなにか決定的なモノを買おうという事にした。F6も考えたけれど、せっかくだから中判以上で、ずっと整備して使い続ける事の出来るマニュアルのカメラにしようと選んだのが500C/M。中判カメラでは定番中の定番のハッセルブラッドの、フルマニュアルカメラだ。潔い6X6の正方形フォーマットで、露出計もついていないが、nFM2でもライカでも普段はGOSSENの単体の露出計を使うので同じ事だ。これまでハッセルを使っていたプロカメラマン達がデジタルに以降しているので中古市場もかなり豊富でレンズや部品を揃えるのも難しくない。一本目のレンズはスタジオ撮影を想定して、ゾナーの150mmを選んだ。
もともとスタジオでじっくり撮るつもりで手に入れたのだけど、頑強なボディは過酷なフィールドでがんがん使うのにも向いている。シンプル極まりない構成で作法さえ間違えなければ壊れるような事もない。以前マチュピチュを訪れた時、肩から2台のハッセルをがらがらとぶらさげて撮影をしていた猛者と会った事もあった。データは中判フィルムをスキャンできるエプソンのスキャナーを使い、デジタルで整理している。フィルムカメラのメイン機材として、スタジオで、フィールドで、長く使って行くことができそうだ。

ポラロイド SX-70



ちょっと街でスナップをするときやパーティで友人を撮ったりするときにはデジカメを使う事が多くなったけれど、以前はポラロイドをよく使っていた。まるっきりカメラに見えない佇まいは被写体を緊張させないという点でスナップ撮影にはとてもよい。革張りの、クロームボディのファインダーを持ち上げ、正方形のフォーマットを覗き込んでマニュアルでフォーカスを合わせる、一連の儀式のような作法も楽しく、独特の淡い描写も気に入っていた。メインの銀塩カメラにハッセルブラッドの500CMを使っているけれど、正方形のフォーマットの楽しさに触れたのはSX-70が最初だった。
今では専用のフィルムを見つける事は難しく、600フィルムのツメを削って使う事になる。描写がちょっと変わってしまうけれど、何しろ僕と同じ歳のカメラだししかたがない(最近SX-70 BLENDフィルムというものがあるそうだけど、これはまだ試していない)。最初に手に入れたのはシンプルな初代LAND CAMERAで、いつも手に届く机の上に置いておいてよく使っていた。ある時たまに自分も被写体になりたくて通りすがりの学生にシャッターを押してもらった際、フィルム排出口に指がかかっていて(SX-70はちょっと思いもかけない隙間から写真が出てくる。ちゃんと説明していなかった僕が悪いのだけど...)モーターの歯車のひとつかふたつ外れてしまったようで壊れてしまった。どうも直すのは難しいようで、その後二台目のALPHA1を手に入れた。これは初代モデルに三脚穴とストラップを追加したモデルだ。
ちょっとメモ代わりに、といったポラならではの使い方や、パーティでのスナップなど、さすがにデジタルの便利さには負けてしまう。最近稼働率はめっきり減ってしまったけれど、たまに欲しかったモノを買った時に記念撮影をする時なんかに使っている。もう何台か手に入れて、黒革やハラコに張り替えて靴や鞄に合わせるような使い方もしてみたい。もうちょっと気楽にフィルムが手に入れられるといいんだけど。