
冬の長い街に住んでいるとどうしても部屋の中にいる時間が長くなる。その上建築なんぞをやっていると部屋に籠って模型をつくったりする。自分の部屋をどういう場所にするのかというのはとても重要で、オーディオはその空間を作るためにも大事なアイテムだ。
楽器は全くできないけど音楽を聞くのは好きな方で、仕事をするときも大抵なにか音楽がかかっている。以前は映画を見られるようにInfinityとサンスイのAV向けのセットアップで音楽を聞いていたのだけど、最近はDVDはMacで見ることも多くなったし、音楽を良い音で聞くためだけのためのもっとシンプルなシステムにした。
Sonic Impactというデジタルアンプは数年前ブラインドテストで高価なピュアアンプに勝る評価を得たとかで話題になったもので、これはその電源部などを強化したモデル。中核になるのはMacに使われたり日本でもカマデンがマニア向けにアンプ製作キットを出したりで注目されるトライパスのデジタルアンプのチップを積んでいる。ヘアライン仕上げのアルミボディの表はパワースイッチと、音量ノブ、青色LEDのみでヘッドフォンアンプなみのシンプルさ。裏もスピーカー端子とRCA端子、パワーケーブルのみ。パワーも電池駆動にする事もできる。
ブラインドテスト云々の議論は他に譲るとしても、ひたすらシンプルでとにかく音を忠実に再現する事だけを目的につくられた小箱という感が気に入っている。合わせているエレクトロボイスのスピーカーの性もあるが、とても解像度が高く素直な音を出してくれて、十分に厚みがある音。高級オーディオというようなセットアップでは全くないけれど今の部屋で過ごす時間を十分に楽しいものにしてくれている。
ボストンの牡蠣
ボストンは港町なので海産物は楽しみのひとつ。ロブスターがとくに有名なようだが、僕が好きなのはオイスター、牡蠣。ロブスターは大人数のパーティーで茹でたり焼いたりしてかぶりつくのはいいけれど、カウンターに座って、アイラ系の島酒を飲みながら、目の前で開けてもらった牡蠣に青いレモンを絞り、海の果汁と肉をすすり込む楽しみにはちょっとかなわない。新鮮な生牡蠣を出してくれるオイスターバーは市内にいくつかあるが、昨夕はちょっと贅沢をしてサウスエンド(ちょっとおされなエリア。ゲイというかメトロセクシュアルな方々が多め。)のオイスターバーへ行ってきた。
サウスエンドは近くに地下鉄の駅が無いのでコプリースクエアから歩かなきゃいけない。店にたどり着く前にすっかり体は冷えきってしまうのだけど、ドアを開けると暖かい空気と海の香りが溢れ出してきて期待感を煽ってくれる。小さめの店内はカウンター席がメイン。カウンターの内側には氷の上にいろんな産地の牡蠣がずらりと並んでいる。
メニュウには産地毎に数十種類の牡蠣の名前が書いてあり、食べ比べる事ができる。ウェイトレスが今朝入ったのはどれか順番に教えてくれる。今回はマサチューセッツ州内の違う産地のものを4種類。注文を聞いてカウンター内で職人さんがひとつづつ丁寧に選んで開けてくれる。付け合わせはワサビとチリソース、ガーリック、レモン。せっかくの牡蠣なのでレモンだけでやる事にする。種類毎大きさも形も違うし、香りも味わいも全く違う。もちろんどれもすばらしく旨いのだけど。
牡蠣はもちろん、モダンなインテリアや音楽の選択、サービスも申し分なかったのだけど、ひとつ残念だったのがハードリカーのライセンスを持っていないのかワインかビールしか置いていなかった事。シャンパンを出してもらったのだけど、やはり牡蠣はウィスキーかウォッカが合うと思うのだけどどうだろう。
Reyesのグローブ

ムエタイの練習をする時に使っているのはCleto Reyesグローブ。K1やプロボクシングの世界タイトルマッチでも使われるメキシコ製。ジムではタイのTwinsやRajaが多いけど、Reyesもたまに見かける。
とても握りやすく、バランスがよいので軽く感じる。ムエタイの練習では16ozと重いものを使うので、バランスが悪いととても使いづらいからね。拳のパッドが厚すぎないのもミット打ちをしていて気持ちがよい。手首の部分もきっちりパッドが入っているのもちょっとだけ心強い。”やけに痛い”とのスパーリングパートナーの言であるが幸いReyesを使っている人とはスパーした事がないので自分では分からない。痛いのかな。”KO率が高いグローブ”なんて聞いた事もあるけど。
久々にジム
昨夕は久々に近くのジムへ体を動かしに行ってきた。久しぶりなのでサンドバッグ蹴って軽めのウェイトくらいをと思っていたのだけど、ジムで知人に偶然会ってしまった。以前散打をやっていた時のコーチなんだけど、そういえば木曜は彼がこのジムでアルバイトにボクシングを教えている日だった。そんなつもりは全くなかったのにライトスパーをやる事に。レガースなんか持ってきていないし脛がとても痛い。そして今日は筋肉痛。でもちょっと気が晴れたかな。
一月に入ってからちょっと忙しくてサボっていたんだけど、そろそろまずいかなと感じてきていたところだった。やはり心身のバランスが崩れるといろいろと調子が悪くなる。ちゃんとスケジュール管理をして体を動かす時間は確保したいものだ。
Surly Fixxer

後輪はMicheのハイフランジハブにVelocity Deep-Vという事を考えていたのだけど、壁にぶらさげたGTを眺めているとこの黒いフレームを緊張感のあるカーボンブレードの前後輪で揃えたところをみたくなり、中古で後輪のRev-Xを探し出して購入した。
ただロード用ハブをピスト用に改造する必要がある。改造する方法はいくつかあるようだけど、今回はSurlyのFixxer というハブコンバーターを使う事にした(スポークの調整が出来ないRev-Xでは他の方法は無いと思うのだけど、あるのかな)。シングルスピードを初めとしてシンプルで実用本位な自転車を作るSurlyにはカルト的な人気があり、ボストンでもよく見かける(ちょっとヒッピーっぽい人が多いかな)。日本にもSurlyを紹介するショップがあり多くのファンがいるようだ。このFixxerはシマノ製のフリーを使ったハブをフィクストギアにしてしまう強引なキットで、お気に入りのホイールをそのままピストに使えてしまえる(一部サイレントクラッチや古いデュラ等対応しないものもあるようなので要注意)。
キットはシャフトやコーン、スペーサー等、必要な部品が入っていて、120,125,130,135と一般的なエンド幅に対応できるようになっている。えらくぶっきらぼうな文章の説明書が一枚入っているきりだけど、シマノのフリーとシャフトを交換するだけなのでそんなには難しくはないはずで、ハブの手入れ等をやった事がある人なら30分もかからずに交換できる。手こずったのはFixxerではハブの左側(ドライブトレインの反対側)は既存のベアリングコーンをそのまま使用する事でシャフトを固定する事になっているのだけど、Rev-Xはシールドベアリングなのでコーンが無い事。ベアリングの内径とFixxerのシャフト外径も違う。外したRev-Xのシャフトはステップ式に直径が変わっていて、このオリジナルのシャフトでないと固定しないようだ。確かにオリジナルのシャフトをFixxerと組み合わせることは出来るけれど、それではエンド幅を120mmにする事ができないしクイックのスキュアーしか使えなくなるのでピストエンドには不向きだ。
結局シールドベアリング用のスリーブを探して、さらにそのスリーブの外径に合ったベアリングに交換するしかないようだ。部品はすでに手に入れたので近く交換予定。今の所はあるメッセンジャー氏から教えてもらった裏技で無理矢理固定して乗っている(安全とは思えないので紹介は出来ませんが)。
Spinergy Rev-X

ボストンの冬はかなり冷え込む。-10℃まで下がる事もざらにあり雪に閉じ込められて自転車に乗る機会は少なくなるけど、暖かい部屋の中で酒を飲みながら弄っているのも楽しく、暗鬱な外を忘れさせてくれる。先日GTのピストのホイールを入れ替えた。もちろん外は雪なのでまだ殆ど乗っていないけれど。
Rev-Xという90年代に一世風靡したスピナジーの名作で八枚の薄いカーボンブレードの緊張感のある佇まいには惚れ惚れとしてしまう。ずっと憧れていたのだけどこのホイールの全盛期には全寮制の大学にいて自転車には乗っていなかったので購入には至らなかった。その攻撃的なデザインがうけるのかメッセンジャー達の間でも前輪に使用している人をたまに見かける。このRev-Xが中古で売りに出されているのを見つけて、さっそくGTに履かせてみた。
スピナジーではこのモデルは99年に生産を中止していて、現在はザイロンスポークというもっとすごいらしい素材でホイールを作っている。カーボンホイールの先駆けとして一時代を築いたRev-Xだけれど、重量的にも性能的にもやはり最新のモデルにはかなわないだろう。またブレードのデザインの問題か今では公認レースでの使用が禁止されているようだし、当時技術が新し過ぎたためか強度に不安があるという話もある。そもそもカーボンって経年劣化するんじゃなかったかな。とはいえ街乗りにはまず問題はないだろうしやっぱり長年のあこがれのホイールが使えるのは嬉しい。
GTの黒いトリプルトライアングルとあいまって緊張感を増して気に入っている。幅広のブレードが風をはらむようでチャールズ河のMass. Av.の橋の上で横風にあおられてちょっと驚いたけど直進はかなり気持ちがよい。Rev-Xはフレキシブル過ぎる、という意見もあったけど、もともとガッチガチのアルミ+3三角のGTではちょうどいいのかな。雪が解けるまであまり乗る機会もないので感想はまだこれから。
GTのピスト

昨年の夏にFELTを手放して手に入れたのがこのGTのピスト。90年代のモデルでまだGTが米国で作られていた頃のものだ。GTである事を強烈に自己主張しているトリプルトライアングルも最近ではあまり見かけなくなった。
GTはPulseとGTBという二種類のピストを作っていたが(他にオリンピックの米国代表チームモデル等もあったがもちろん一般的ではない)、これがどちらのモデルであるのかは分からない。ショートホイールベースでBB位置も高く、純粋にトラック競技用にデザインされたモデルである。フルアルミのため驚く程軽い。GTのピストを体験/練習用に貸し出しているヴェロドロームもあり、人気のあったモデルのようだ。アレーキャットレースでもよく見かける。
僕は今の所トラック競技にもアレーキャットにも挑戦するつもりはないので街乗りに楽しいようにセットアップしている。今の所↓
Brooks Swallow
ブルホーンバー+Tektro リバースブレーキレバー
Campagnolo Chorus フロントブレーキキャリパー
Campagnolo Chorus BB+クランクセット
Miche フロント50T
Miche リア17T
Spinergy Rev-X 前後ホイール
Continental Triathlon Tubular
Surly Fixxer Hub Converter
MKS Sylvan+Power Grips
Cinelli Alter Stem 130mm (入手済み。近くインストール予定)
Miche Supertype Seatpost (入手予定)
ボストンの冬は寒く雪に閉じ込められているのでたまにしか自転車には乗れない。夏の終わりに買ったこのGTは殆ど酒の肴。春が待ち遠しい。
フィクシーに乗る

FELTには満足していたのだけど、ずっと気になっていた自転車がある。フィクシーやピストと呼ばれる固定ギヤのシングルスピードバイクだ。本来トラック競技に使われる種類のもので公道を走るものではないけれど、そのシンプルさや頑丈さからメッセンジャーが好んで使うようになったようだ。ボストンにもメッセンジャーはたくさんいるが、ピスト(含ロード改造のフィクシー)に乗っている人がかなり多い。
固定ギアでタイヤも細くブレーキも付いていず、街中ではひどく取り扱いが面倒に見えるこの自転車は慣れれば身体の延長のようにコントロールする事ができる。もともと競技車両なだけに微妙な操作にも俊敏に反応し、軽量で機動力も高い。最近ではメッセジャーだけでなくマニアックなファン層をがあるようで街角でよく見かける。シンプルで速度をダイレクトに感じる事の出来るピストにこだわってのる人達は彼らのライフスタイルを反映するモノとしてピストを選んでいるのかもしれない。メッセンジャーバッグや周辺のファッションも含めてすでにひとつのストリートカルチャーをかたち作っているようだが、若年層をメインとしているわけではなく幅広い年齢層にファンがいるようで、僕の周りの建築やデザインをやっている人にも愛用者が多い。
以前短期間京都の事務所でインターンをする機会があったのだけど、実家に置いてあった古いロードをフィクシーに改造してみた(写真)。最初は加減速の多い街中でも常にクランクしていなければならない事にとまどったが、しばらくすると慣れてそれが自然になってくる。自転車と身体の運動と速度が途切れる事なくリンクしていて自転車との一体感を感じられる。百万遍のアパートから三条や木屋町へ浸透していく時、細い路地を通り抜けて行くのはとても楽しく、毎晩のように乗っていた。
こうなるとボストンに帰ってもぜひピストに乗りたいと思っていたが、その後トラック競技用のGTのピストを手に入れてFELTから乗り換える事になる。
イームズデスクユニットを作ってみる

イームズDKRを購入してからデスクユニットが欲しくなりレザーディストリクトにあるミッドセンチュリー家具のアンティークショップに見に行った(買いに行ったわけではない)。ハーマンミラーの新品が展示してあったけれどもちろん買える値段ではない。こうなったら自分で作ってやろうと実物の確認に来たのである。店長さんにデザイン学生である事、ケーススタディに複製を作ってみたい事などを説明し許可を頂いて実測と質感の確認をした。
もともと大量生産される机で使用されているマテリアルも一般的なプライウッドやスチールのロッド等だし特別な曲げ加工もないシンプルなデザインなので自分で出来るはずと考えた。もちろん当時と同じ規格の部品が手に入る訳ではないけれど近いものはできるはず。迷惑すぎる行為だけど学生の勉強のためと実測を許してくれた店長さんに感謝します。
学校が既に始まっていて少しずつの作業だったので一ヶ月以上かかってしまったけれど、プライウッドやロッド等は近くの材木店やホームセンターで購入する事ができ、全てハンドツールで完成する事ができた。この机はまだ大事に使っているけどさすがに日本に帰る時には置いていかないといけないんだろうな。あまり考えたくないけど。
(チャールズ&レイ・イームズMoMAstoreへ)
イームズDKR

6年住んだ中西部の大学街からボストンに引っ越してきたのは2001年の夏。貧乏学生の事なので業者を雇う事も無く、またボストンはあまりに遠くて何度も往復するわけにはいかないので、愛車のVW シロッコ16Vに積めるだけ積み込んでI-90を二日走り続けて1130mile (1820km)の移動というシンプルな引っ越し。そんなわけで家具は引っ越しできなかったので最初に見つけたミッションヒル(治安はあまり良くないけれど家賃が安めでアート学生が多い)のアパートの生活もシンプルきわまりないスタートだった。
学校はすぐにでも始まるので先ずは机と椅子を購入しなければならない。新生活の記念という事もあったのでずっと欲しかったイームズのDKR/ワイヤーメッシュチェアを購入した。パッドを買う予算は無かったのでワイヤーむき出しで長時間座っているとお尻がえらい事になってしまうんだけど、クロームの、エッフェルタワーベースの緊張感がとても気に入っていた(その後知人にもう一脚譲ってもらった)。
さて、椅子がDKRとなるともちろん机もEDU/デスクユニットが欲しくなる訳だけどハーマンミラーによるこの机は学生がおいそれと買えるような値段の代物ではない。でも他に気に入ったものもない。EDUは一ヶ月後無茶な手段で手に入れる事になるのだけど、その間僕の部屋にはDKRが一脚あるきりで、机も無くベッドも無く(同じく気に入ったベッドが手に入らなかった)、板間に南米調査旅行に使うエアマットと寝袋で、勉強は板間に座り込んで生活していた。DKRの上にはルームメイトの子猫が寝ている。こうなるとなんのための椅子なんだか分からなくなるが意地になっていたのだろう。そんなシンプルなスタート。
(チャールズ&レイ・イームズMoMAstoreへ)